【2022年 3月29日】
NHK大河ドラマや映画の演出、脚本、監督などを手掛ける三谷幸喜さんが前立腺がんにかかっていることをたまたま読んだ本で知りました。
がんのネタを彼ならではの明るい感じで書かれています。
「僕もたまにはがんになる」(対談集/幻冬舎)
三谷 幸喜
穎川 晋(主治医/東京慈恵医科大学泌尿器科主任教授)
2021年10月25日 第1版
三谷氏の当初のPSAは6~7、T1cで腹腔鏡手術での全摘を選択され、6年経って経過は順調とのこと。
終始「前立腺がんは怖くない、大した病気ではないので安心ください」「生きたいという意志の強さで克服できます」との表現で、そうじゃない場合もたくさんあるのでは?と思いながら読みましたが、さすがに彼ならではの面白い表現もたくさんあって笑ってしまうところもあります。
■三谷氏の発言
生検時にピアスの穴をあけるような機械を肛門にいれて銃を撃つかんじはチャッカマンそっくり…。
(そうだったんだ。私はとても痛かったのでもっと見とけばよかった~)
手術後に「終わった時点というのは、大河ドラマでいうと何話目?」という質問に対して、主治医は「50話あるとして5話目」であり、手術がゴールではないということ。(よくあるパターンですね)
手術直後の尿モレは、おむつ生活に凹んだ。
術後5年の現在でもたまにあり、必ず夕方4~5時の間で、そのため時計が無くても時間がわかるそうです^^;
(ちょっと盛っている?)
■主治医の発言
全摘での勃起機能温存は「俺がやればなんとかなる。それをできるのは日本で俺だけ」。
実際三谷氏は復活していて、他の多くの方はそうでない話をよく聞きます。
女性はお腹に力がかかったら漏れることがあり、抵抗感が低いらしいですが、男性の尿モレはみなさん経験が少なく下着にわずかなシミでも落ち込み、人間の尊厳にかかわるとまで思ってしまう。
対策として尿失禁体操で括約筋を鍛えるのがありますが、もともと女性の対策であり、ほぼ効果はないとのこと。
尿が通る周辺は鍛えられない筋肉もあるため体操ではなかなか改善しない。
しかし男性は前立腺がブロックしていて、女性に比べると尿モレは圧倒的に少ないが、逆に尿が出なくて困る場合がある。
尿のキレの悪さはほぼ年齢変化によるもの、でも最近の男性のズボンはチャックの長さが短く、高い位置のためペニスが引っ掛かりやすく、上を向いて排尿している状況になり、尿が溜まりやすい。
(あるある!私はデザインという名のコストダウンではないかと思っています^^;安物だからかな?)
肺がんや胃がんでも骨に転移するが、それは「溶骨」であり歩行困難になるが、痛みは体を固定することで多少おさまる。
前立腺がんは「造骨」で余計なところに骨を勝手に作ってしまい、盛り上がって骨の表面にある細かい神経を刺激するため内側からハンマーでたたかれるような強い痛みが出る違いがある。
三谷氏は「内側からハンマーはたたきづらそうだけど痛そう」と^^;
1980年代前半はPSA検査もなく患者の半数がすでに転移あり、ホルモン治療が効かなくなると余命1年位、患者の痛み苦しむ姿が鮮烈だったそうです。
1991年頃に前立腺がんは「そんなん聞いたことがない」という時代で、日本でのPSA検査は1992年から、インパクトを与えたのは2002年の当時の天皇陛下罹患のニュースで、この頃日本での患者が急増した。
BRCA「修復遺伝子・ブラカ」(DNAが傷ついた時に治してくれる遺伝子)は誰でも持っていて、もともといいヤツであるが、傷ついたり何かの原因で変異してしまうと、修復機能が働かなくなり、悪さをする。
ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが「乳がんになっていないのに、乳がんになる可能性がある」として乳房を取る手術を受けたのは、彼女がBRCAの遺伝子の変異を持っているからだそうです。
未来のがん治療は、前立腺がんに限らず、目指すところは「慢性疾患」になること。
予防できなくても、罹患後にがんと共存しながら寿命を全うすることができ、「がんになっても怖くないぞ」と思えること。
三谷氏の「前立腺がんは怖くない、大した病気ではないので安心ください」はT1cだから言えることという風にとらえてしまいます。
もっと高リスクの方の立場に立った視点が欲しかった気がします。
それよりも対談ならではの主治医の話が面白かった。
まあそれらの話をうまく引き出したのは三谷氏かもしれませんが…。
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